栄養/健康
■アミノ酸の過大報道&広告&認識
 いつのまにか、トレンドはアミノ酸?う〜ん、確かにアミノ酸は健康やスポーツにとって、重要な要素のひとつではあるが。。。人間の体を構成するたんぱく質は細かく言うと、20種類のアミノ酸によって作られています。20種類のアミノ酸を摂ることによって、全身の健康が保たれているのです。すべてを植物性食品から摂ることはできず、どうしても動物性たんぱく質に含まれているアミノ酸が必要になります。20種類のアミノ酸がバランスよく含まれているものを良質のたんぱく質と呼んでいまるけど、これに該当する食品として大豆や肉類、卵類、乳製品などがあります。

 植物性食品の代表である大豆のアミノ酸バランスがよいなら、「これを食べていればよいのではないか」、と考えるかもしれません。しかし、アミノ酸は20種類がバランスよく含まれていればいいというものではありません。 アミノ酸には、体の中で合成されないために食品から摂らないといけない必須アミノ酸と、体の中で合成される非必須アミノ酸があります。必須アミノ酸が多く含まれていて、しかも非必須アミノ酸も含まれている食品のほうが、積極的に摂るべき食品といえます。この考え方からすると、大豆には不足しているアミノ酸があって、これだけで充分とは言えない食品なのです。必須アミノ酸が豊富で、非必須アミノ酸も含まれていて、20種類のアミノ酸が足りている食品としては、豚肉、鶏卵、牛乳があげられています。

 「こんな運動しなくても」というコマーシャルが有名になったアミノ酸入りの飲料。このコマーシャルを見聞きして、あなたは、どんなふうに感じたでしょうか。「運動をしなくても、これを飲むだけでダイエットできる」と思った人のほうが、「こんなに激しい運動をしなくてもいい」と思った人よりも多かったようで、飲むだけでやせられる、運動などしなくてもいい、と楽なほうに取った人が目立っています。ところが、アミノ酸を摂取してのダイエット法は、運動なしでは効果はあげられません。アミノ酸の中には脂肪の燃焼を進める効果があるものが複数あって、これを摂ることで、運動を始めたときから脂肪が燃え始めるので、効果的にダイエットできるというのがアミノ酸ダイエットの基本です。

 通常では運動を始めて10〜15分ほどまでは糖質が主に燃えていて、それ以降に脂肪が盛んに燃えるようになります。これは体が温まって、脂肪を燃焼させる酵素のリパーゼが働き始めるまでに時間がかかることもありますが、それよりも大きいのは体の刺激を受けて脳から興奮ホルモンのアドレナリンが分泌されて、それによって脂肪細胞から脂肪が出てくるまでに10分以上の時間がかかることです。ところが、アミノ酸を摂取すると、体を動かし始めてすぐに脂肪が脂肪細胞の中から出てきて、燃え始めるので、効果的に燃焼を進めていくことができるのです。たとえば30分のウォーキングでは、アミノ酸なしでは実際に脂肪が燃えていたのが15分間であったとすると、アミノ酸ありでは30分間まるまる燃えているわけで、2倍の効率ということになります。

 アミノ酸ダイエットは、あくまで運動とセットになっているのに、体を動かさなかったら、ダイエットに関しては、あまり役立たないことになります。それどころか、アミノ酸飲料の場合には、アミノ酸は含まれているものの、飲みやすくするためにブドウ糖をはじめとした糖分が含まれていて、こちらのせいで体を動かさなかったら、かえって太ることにもなります。どれくらいの糖分が含まれているのかというと、通常は6.2%といいます。500ml(ミリリットル)のペットボトルだと31gになります。果汁飲料にも、これくらいの糖分は含まれていますが、果汁100%ジュースの場合には、糖分のほとんどは果糖です。果糖は膵臓を刺激しないので、膵臓からインスリンが分泌されません。インスリンは血液中のブドウ糖を筋肉や肝臓に取り込んだり、血液中で余分となったブドウ糖を肝臓で中性脂肪に合成して、脂肪細胞に溜め込む働きがあります。

 こういったことから果汁100%ジュースなら、飲料に含まれているエネルギー分しかダイエットには関係しないわけですが、これが砂糖となると半分は影響されます。というのは、砂糖を構成するショ糖はブドウ糖と果糖が1分子ずつ結びついたもので、半分が脂肪を脂肪細胞に取り込んでいくのを刺激するブドウ糖となっているからです。これに対して、スポーツ飲料やアミノ酸飲料に使われているのは、吸収性がよく、エネルギー効率がよいブドウ糖を中心とした糖質です。運動をする人にとっては、吸収率がよく、エネルギー効率がよいほうが便利ではありますが、ただ飲むだけで運動をしないという人にとっては、糖分の摂りすぎであり、その糖分も脂肪を増やし、脂肪細胞の中の脂肪を増やしていくブドウ糖となると、やせるのではなく、太る結果となってしまいます。

 飲料の裏側の表示を見ると、原材料名のところに中に含まれている成分が記載されていますが、この順番は水分以外で重量別に多いものから記載することになっています。ほとんどのアミノ酸飲料は糖類が一番先に書かれています。それだけブドウ糖が多く、アミノ酸のほうは少ないということがわかります。やせるつもりだったのに、太ってしまったというだけなら、アミノ酸飲料を飲んで運動をすれば解決できるのかもしれませんが、ブドウ糖を摂りすぎたために糖尿病になってしまうこともあります。ペットボトル症候群という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、これは清涼飲料の中に含まれるブドウ糖のせいで、高血糖状態となり、それが引き金となって糖尿病になってしまうものです。

 ブドウ糖が多く含まれた飲料を飲むと、血糖値が急激に上がります。血糖というのは血液中のブドウ糖のことで、体内に入ってくるブドウ糖が多くなるほど血糖値は上昇していくことになります。血糖値が上昇すると、それに応じて膵臓からインスリンが分泌されますが、ブドウ糖が含まれた飲料は血糖値を一気に上昇させるものの、食事をしたときに比べるとブドウ糖の量は少ないために血糖値は平常の状態よりも下がってしまいます。血糖値が低くなると空腹感を感じますが、ブドウ糖が多く含まれた清涼飲料は吸収性がよいために、かなりの量を飲むことができます。そのために再び血糖値が上昇し、さらに大きく下がるということを繰り返していきますが、こういったことが続くと膵臓はインスリンを出し続けることになり、だんだんと膵臓が疲弊していって、ついにはインスリンをあまり分泌できなくなります。これが糖尿病の始まりです。ブドウ糖は主に筋肉細胞に取り込まれてエネルギー化されますが、インスリンはブドウ糖を取り込むときに必要で、インスリン不足では筋肉細胞に入りきれなかったブドウ糖が血液中に戻ってしまい、血糖値が下がらなくなっていきます。

 糖尿病は血糖値が一定以上になった場合に診断されますが、血液中のブドウ糖が多い高血糖状態になったからといって、目立った症状が現れるわけではありません。しかし、高血糖状態が長く続くと、血管の細胞がブドウ糖の影響を受けて、新陳代謝が悪くなり、血管がもろくなっていくようになります。特に影響を受けやすいのは細小血管で、これらの血管が密集している目の網膜、腎臓、神経細胞は血流が悪くなることなどによって障害を受けます。それが三大合併症と呼ばれる糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害です。糖尿病では死なないなどと言われることもありますが、実際には年間に1万2000人ほどが亡くなっています。そのほとんどは糖尿病性腎症によるものです。このほかにも糖尿病になると動脈硬化で亡くなる確率が2〜3倍になり、感染症で10人に1人がなくなっています。さらに糖尿病患者の平均寿命は、それ以外の人に比べて10歳以上も短くなっています。糖尿病は、命に関わる結果にもなりかねないのです。糖尿病は太った人のほうが発症しやすいのに反して、糖尿病になると急にやせてくるので、体重だけを見ると結果的にはダイエットと同じことになるかもしれませんが、病気でやせたのでは意味がありません。アミノ酸の効果を活用してダイエットするなら、アミノ酸のサプリメントにするか、アミノ酸飲料を飲んで運動するか、という2つの選択しかないはずです。ヒットCMにはなったものの、運動をしないでも飲むだけでいい、というような誤解を広めるようなコマーシャルどうかと思うね。