栄養/健康
■今はやりのにがりで健康を害することも
 不足しがちなミネラルを補給して、ダイエットや糖尿病、便秘などの解消のほか、さまざまな健康効果が得られるというので大評判となっている“にがり”。数多くある効果の中でも最も注目されているのはダイエットでしょう。健康誌やテレビでは、にがりダイエットが頻繁に報道され、スーパーやドラッグストアでも、にがりは人気商品となっています。日曜日夜の健康バラエティ番組では、にがりダイエットの効果的な摂るタイミングについて紹介され、さらに人気が高まりました。にがりは海水を煮詰めて結晶化して沈んだ塩分を取り除いた残りで、上澄みの部分に当たります。塩分は残っているものの海水に比べると少なく、海水に含まれる約80種類のミネラルが凝縮されているので、ミネラル補給に優れている天然商品といえます。

 ダイエットに効果があるのは、にがりに含まれるマグネシウムが小腸でのブドウ糖の吸収を妨げるのが一つ目の理由です。詳しくいうと、マグネシウムはブドウ糖と同時に小腸から吸収されるために、マグネシウムが多くあるとマグネシウムが吸収された分、ブドウ糖の吸収量が減ってしまいます。ブドウ糖が多く吸収されると血糖値が上昇して、これに反応して膵臓からインスリンが多く分泌されます。インスリンには肝臓での中性脂肪の合成を進めて、脂肪細胞に中性脂肪を多く蓄積させる作用があるために、太る要因となっています。この作用が、マグネシウムによって妨げられるわけです。

 マグネシウムには膵臓から分泌される膵リパーゼの働きを抑える作用があります。膵リパーゼの働きが抑えられると、脂肪の分解が進まなくなり、そのために吸収される脂肪が少なくなるので、ダイエットにつながるというのが二つ目の理由です。このことから言えるのは、マグネシウムが含まれるにがりは、空腹時ではなく、食事と一緒、もしくは食事のあとに摂るのがよいということです。

 もう一つの理由は細胞の活性化です。マグネシウムは体の細胞の中にある約300種類もの酵素の働きを助ける作用があります。マグネシウムが不足すると、細胞の活動が低下することになるので、これを補うことで細胞の代謝をよくしてエネルギー効率を高めるとともに、細胞レベルから健康にしていくことができるというわけです。筋肉の収縮は筋肉細胞の中にカルシウムが入ることによって起こりますが、体内のマグネシウムが不足すると筋肉細胞にカルシウムが多く流れ込みすぎるようになり、筋肉の収縮がうまくいかなくなります。その結果、痙攣が起こったり、心臓や血管の収縮にも悪影響が出てしまいます。

 マグネシウムの不足は精神作用にも影響があり、不足するとイライラしたり興奮しやすくなります。ストレスによってマグネシウムは不足するので、ストレス社会においては不足しやすいミネラルといえます。また、ストレスによって不足したために、イライラなどのストレスを引き起こし、そのために不足するという悪循環にもなりかねません。 糖尿病の人は尿中に排泄されるマグネシウムの量が多くなることも知られています。マグネシウムはビタミンB1とともに糖質、脂質の代謝に関わっているので、マグネシウムが不足すると糖質と脂質の燃焼がうまくいかなくなり、これが糖尿病の引き金にもなります。燃焼がうまくいかないということは、ダイエットにも関わることで、マグネシウムが含まれるにがりを摂ることはダイエットにも効果があるというわけです。

 マグネシウムは一般の食品ではナッツ類、魚介類、海藻、豆類などに多く含まれていますが、こういった食品を摂る機会は減っています。穀類は胚芽の部分に多めに含まれていますが、精白された米や麦での補給は望み薄です。肉や加工食品、清涼飲料水に含まれるリンにはマグネシウムの吸収を妨げる作用があり、アルコール飲料によっても不足するようになります。通常の食生活では、どうしても不足してしまうので、にがりは効果的に摂取するには有効だといえます。にがりを飲むことで、体の調子がよくなるというのは、不足しているものが補われる結果ということですが、「マグネシウムは摂りすぎても体に害がない」とテレビや健康誌などで語られることが多く、早くダイエットしたいからと余分に摂る人も多いようです。

 しかし、マグネシウムに害がないというのは間違いです。多く摂っても腎臓が正常な状態であれば排泄してくれますが、腎臓に障害があると体内に多く残り、腎臓のほか全身に悪影響を与える可能性が指摘されています。また、マグネシウムを一時的に多く摂ると、便が軟らかくなりすぎたり、下痢を起こすこともあります。3月には原液のにがりを誤って飲んだために急性ショックで亡くなった人もいます。マグネシウムは安全だったとしても、にがりには少なからずナトリウムが含まれています。ナトリウムの摂りすぎは高血圧などの要因となりますが、にがりに含まれるナトリウムの量は商品によって異なり、多いものと少ないものを比較すると4倍ほどの開きが見られます。